衆院選が公示された1月27日、千葉5区の第一声取材で市川市に行った。待っていると、候補者は遠くから走ってやってきた。渋滞に巻き込まれ、車を乗り捨てたという。水を飲み、息を整えた候補者に声をかけると「『もう本当に選挙なの?』と思っています。現実感がない」とつぶやいた。
解散から投開票日までは16日で戦後最短。投票所入場券が、期日前投票の開始日までに届かない、ポスター掲示場に投票日が記載できない。市選挙管理委員会のバタバタぶりを記事にした。ある職員は「(首相に)本当は言いたいことがたくさんある」。普段穏やかな職員が吐いた感情混じりの言葉に、そうだよなと思った。
記事を書くのも慌ただしかった。候補者の経歴などの情報は締め切りまでの時間が短い。表記をそろえたり公認、非公認を本社でも確認したりするためだ。さらに、千葉版の記事は、いつもの地域課題や候補者の「横顔」の掲載を見送り、与野党の攻防を中心として乗り切った。
息を切らして駆けつけたあの候補者は有権者に政策と思いを届けられただろうか。あの職員は正確で的確なサービスを有権者に提供できただろうか。マスコミは的を射た報道ができただろうか。
朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋



